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スマさん世代の腐った文字書きが好きなものは好きと無駄に叫ぶ

緋色の研究ー朗読劇 を村井君で見る

「SHARROCK」からこっち、ワトソンびいきな私にもたらされた「朗読劇 緋色の研究」の知らせ。村井君がワトソンということですが、ぎりぎりまで悩んでいました。

だってさ。劇場が「銀河劇場」なんだもの。私の中で、朗読劇は「パルコ劇場」なわけです。ぼくとしょには行けなかったのですが、「LOVE LETTERS」を知っている人ならその気持ちをわかってくれると思う。

箱が大きすぎる[E:sweat01] あんなでかい箱で朗読劇って。舞台と客席の距離は確かに近い。が、朗読劇って3階席で見るものか?と悩んだわけです。

銀河劇場。前身は「アートスフィア」。ここでは結構いろいろ見たと思う。石井さんで「ロス・タラントス」「出島」、藤原竜也君・市村正親さんで「ヴェニスの商人」。モノレールで来なきゃいけないこの劇場のあるシーフォートスクエアの空気は独特だ。

以前はこじゃれた雑貨屋さんなんかもあって、バブルの香りを残した特別なデートコースの空気を醸し出していた。だが、久しぶりに行くと…なんだかすすけている。いや、きれいなのだがなんというか、でかい結婚式場になってしまっていた。「ちょっと気取ってくるところ」の意味合いがなんだか変わってしまっていたのが少しさみしい。

とはいってもまぁ、劇場に罪はない。局中法度のもやもやでついぽちっとやってしまったオークションでチケットを入手したのでとりあえず。

席に座ると、舞台には本棚のセットと肘掛け椅子。221Bの居間にあるような椅子であることがうれしい。そして生演奏用のビブラフォンが目立つ。いろいろ席はありましたが、朗読する「表情」が見たかったので、1階席をGetしたのは正解。椅子の座り心地の良さとあいまって期待をさせてくれます。

私が狙ったのは「矢崎広×村井良大」のホームズ×ワトソンペア。山崎さんのホームズバージョンはさすがに思いとどまった。おそらく全然違う芝居なのでしょうが、見たいホームズができそうなのは矢崎君だったので。

音楽が流れ、村井君が上手からやってくる。
えーと。最初に言っておきます。私は村井君が好きです。が。が。。。。。
スーツ。思ったより…うーんという感じ。何よりうーんは、ぼすっと座ったその感じ。裾!!めくれて座ってる。イギリス紳士なんだから、もうちょい、気をつけてほしい…というかつけられそうな気がしていたのでちょっと残念。
そして第一声。村井君のざらっとした声の響きが結構好きだし、柔らかく低めの…ぬ?…高い。
若いワトソンとしては、たぶん、有。でも、回想録としてえーとね。軽いんですよ。声づかいが。なんか、疲れをテンションでごまかしているような…そして一人称が「あたし」に聞こえる。「すうねるところ」のマリオのまんまじゃんとか。ちょっと落胆をした。髪もね、分け目のほうを客席に向けてくれないよ、ちょっともったりしてしまう。すいません、うるさくて。
だめ、というんじゃない。が。「西方笑土~踊るカマドウマの夜」とか鍋の小早川くんとかね、あの辺りを想像してたんでね。そういう落胆。
ただ、足を組まない。それが妙に気になった。組んだらきれいだと思うけど、でも…?と引っかかっていたわけです。
そして、矢崎ホームズ登場。いやー、立ち姿がきれいだったら!TVより綺麗だわと真剣に思いましたね。ふわふわ髪がエキセントリックさを増していて、プライドが高くてかわいいホームズですね。
進むにつれて空気がかなりあったまっていく。
警部たちの登場で、「ここの使い分けのためにこのトーンか」と納得。声の幅をわかっているからこそできる芸当、と受け取りました。声の幅はこれから作ればいい。若いんだし。
ホームズの推理を聴くワトソンが、ぐいと身を乗り出す。これだ。この動きは、足を組んでいてはできない。だんだんと実直で純粋で、でもホームズに心酔するワトソンが見えてきた。こういうのを見たかったんだ。
女将さんのくだりは、早口なアヤシイオカマワトソンと色気たっぷり主旨なし女のホームズってのがそれなりに笑えた。演出として…筋の中にはいらんけど。ボーナストラックですね。

でも実は好きだったのは二幕とカーテンコール。

二幕の緊迫感のある回想は、彼らの持つ若さと狂信者の危うさがよい感じで融合していて息をのんだ。

そしてカーテンコール。客席に礼をして上下に分かれて引っ込む二人。袖間際、矢崎君が何かに引っかかって大きな音を出す。村井君がゆっくりと振り返る。「ごめんごめん」と言いたげにあわてて、手で拝む矢崎君。
その後の一瞬の間の村井君が圧巻だった。
「何が起こったのか」と少しだけ目を凝らして、あわてている矢崎君を確認。
軽く一呼吸する間の後、うっすらと唇に微笑が浮かぶ。破顔ではない。「何事もない。問題ない。大丈夫だから」
そしてもう一度村井君は袖のほうへと同じようにゆったりと向き直る。胸を張った穏やかな足取りで去って行った。
小さなことだ。たぶんそうではないのかもしれない。でも、そう思わせる。共演者のドジを受け止める。作品の空気を壊さない。問題をカバーする。そのままにそこにいて、空気を動かしていく。
あの一瞬で、「見に来てよかった」と、「これからも見て行こう」と、思えた。ありがとう。